むあ文庫の本04「OWL MOON 月夜のみみずく」

2018/1/30

「OWL MOON 月夜のみみずく」
ヨーレン詩 ショーエンヘール絵 工藤直子訳(偕成社/1989年出版)

1月からのBOOKテーマ「夜の物語」のうちの一冊として店内に陳列しています。

この物語に出てくるみみずくは、絵本によく出てくるような、人間みたいに話したり服を着ていたり、友達になったりするような動物の姿ではありません。現実の森の中に生息する野生動物として描かれています。物語のクライマックスは、少女とみみずくが出会う一瞬の場面であり、それ以外の大部分は、少女がみみずく探しを心待ちにする気持ちや雪の感触、冷たい耳の感覚、近づくにつれ高鳴る鼓動など、みみずくに出会うまでの道のりを描いています。その中で、みみずくに会って目が合うのはおそらくほんの一瞬。少女が失う時間感覚から、人と野生動物という交わることのない別世界に生きる者同士の出会い、また両者の間にある遠い距離を想像しました。「人間にとって野生動物とは、遥かな彼岸に生きるもの。その間には、果てしない闇が広がっている。人間と野生のクマが触れ合う瞬間があるものだろうか。」と言ったのは探検家で写真家の星野道夫だが、この絵本はまさにそんな一瞬の触れ合いを描いているように思いました。
いつか見た大木、遠い地にあった白樺の林、森に住むみみずく、私が生きている世界とは別のルールや時間軸で生きる世界の気配を感じる時があります。人、野生動物、過ぎ去った物事とのあらゆる距離について、またその距離が時に生む小さな奇跡について考える、静かな感動をよぶ物語です。