夜に夜の本をよむ

2017/7/7

むあ文庫のカフェ内では、
窓際に空の本、木々の前には森の本、石の本の前には石を置いています。

本を開くと、舞台が始まるように物語がすすんで、
本を閉じると、幕が下りるように物語は終わります。

ただ、真っ暗で外の世界を遮断するような劇場とは違って、
本は、よみながらも本を持つ私がいて、部屋があって、
音が聞こえ、そこには時間が流れています。
本の中の世界と私が今生きている世界が切り離されることなく同じ場所にあるのが、
本の魅力のひとつだと思います。

空の本をよみながら空を見上げることも、夜に夜の本をよむこともできる。
お菓子を食べながらカカオ農園の本をよんだり、
ケガをした時に傷ついた兵士の本をよんだりする。

「物語はそこかしこにあるのです。人間すべての心の中にある。記憶の中にある。誰でも生きている限り、かたわらに自ら作った物語を携えている、というふうに私は思います。」
「物語の役割」小川洋子/著より抜粋

「きょう、わたしたちは生きている、しかしあしたになったら、きょうという日は物語に変わる。世界ぜんたいが、人間の生活のすべてが、ひとつの長い物語なのさ。」
「お話を運んだ馬」I・B・シンガー/著より抜粋

本に出てくる、その物語をとおして
自分自身が今いるこの場所の在処を探っているのだという気がします。