むあ文庫は再開1周年を迎えました

2018/5/14

昨年5月に文庫を再開して1年が経ちました。
庭を少しずつ整備し、古い本を修復しながらも新たな本が少しずつ増え、お客さまも少しずつ増え、発見することもたくさんありました。
そこにすでにありながら、今まで見えていなかったものを1つ見つけては喜ぶような1年でした。

店主である私が物心ついた時にはすでにあった文庫。子どもの頃から絵本や児童文学書を豊かに享受できる環境にありました。時が経ち、子どものために存在していた文庫はその役割を失いつつありました。打ち捨てられたような場所は、私の大切な一部が放ったらかしにされ、存在理由を失ったまま宙を漂っているように見えました。大切な何かと分かっていながら後回しにしてきたものと向き合おうと、文庫の本を少しずつ読み返し、その理由を考えてきました。子どものときに読んだ、あの時の感覚とは違う出会いがそこにはありました。ある老夫婦の日常、鳩と年老いた職人との別れ、キツネのついた嘘の話でありながら、それは私自身が生きる世界そのものでした。なぜその物語を読んで心動くのか、それは悲しい嬉しいといった感情を越えた、生きること死ぬことにまつわる大きな感動であり、「何か」の理由であり、文庫の存在意義でもあるように思えました。「懐かしい」というだけではない、その先にある新たな物語との出会い、今この時代を生きているからこそ心に響く物語との出会いの場所をこれからも作っていきたいと思います。

むあ文庫にお越しの方には、並べられた本を楽しみに来られる方もいます。ただ窓の外を見ながら時間を過ごす方もおられます。お気に入りの紅茶を飲みに来られる方もいます。誰かにとってのむあ文庫が、今日も生き続けていれば嬉しいなと思います。それは同時に、日々の中で後回しにされがちな文学や芸術が日々の中で生き続けていくための、私自身にとっての挑戦でもあります。

1年間どうもありがとうございました。
これからもむあ文庫をどうぞよろしくお願い致します。

文庫再開一周年を機に、文庫通信を発行いたします。
主にブログで更新中の本の紹介や庭のこと、文庫の最新情報を手に取って読める形に。
気まぐれ不定期に発行予定です。