むあ文庫の本06「あおのじかん」

2018/9/7

「あおのじかん」
イザベル・シムレール 作/絵 石津ちひろ 訳(岩波書店/2016年出版)

太陽が沈み、夜が訪れるまでのひとときを描いたフランスの絵本です。

日が沈み、夜がやってくるまでのひととき「あおのじかん」。その魔法のような言葉によって、青い色をした生きものたちの生の営みが標本のように集められた絵本です。見返し扉には、様々な青が、パレットに出した絵具のようにたくさん描かれていて、それぞれの青色に作者自身がつけた名前が書かれています。「青」という言葉は一つでも、自分自身が知っている「青」の色はたくさんあって、その一色一色が自分自身にとっては唯一無二の青色として、記憶の奥底に収納されているような気がしました。
色の認識は、人によって異なっていて、他人の見た色を確かめる術はありません。自分自身が見た色を人に伝えようとするとき、自分自身の言葉で語る必要があります。記憶の奥底に溜まった色に名前をつけていくという作業は、自分の言葉をもつ、ということでもあるように思われました。
私は何の時間の標本をつくり、何を集め、そこにどんな名前をつけていくのか、この絵本からはそんな宿題を出されたように感じています。